住宅購入は「今が買い時」か?物価高・金利上昇・家賃上昇から読み解く賢い住宅ローン戦略

「住宅価格が高くて、とても手が出ない」 「金利が上がるというニュースを見て、今ローンを組むのが不安になった」
最近、30〜40代のお客様から、こうした声を聞く機会が増えてきました。 これまでは「結婚」や「出産」といった明るいライフイベントが住宅購入のきっかけでしたが、ここ最近は少し様子が違います。

 「賃貸の更新時期が迫り、家賃の値上げ通知が来た」
 「物件価格や金利が上がっているが、今のうちに買った方がよいのか」
 「今のままで良いのかという、漠然とした将来不安がある」

こうしたきっかけで相談に来られる方が増えているのです。 物件価格の高騰、金利上昇、そしてじわりと迫る家賃の値上げ。住宅を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化してきており、「待っていれば状況が良くなる」とは言えない局面に差し掛かっています。
では今は、「住宅購入に不利なタイミング」なのでしょうか。それとも、「条件がこれ以上悪くなる前に検討すべき時期」なのでしょうか。

本コラムでは、プロのファイナンシャルプランナーの視点から、現在の市況を冷静に分析し、インフレ・金利上昇局面における「失敗しない住宅ローン戦略」と、購入を決断するための「基準」について解説していきます。

なぜ今、住宅価格は高いのか? 「待てば下がる」への期待と現実

まず、多くの方が実感している「住宅価格が高い」という感覚は、事実なのでしょうか。国土交通省が公表している不動産価格指数(住宅)を見ると、2010年を100とした場合、直近の住宅総合指数は140前後まで上昇しています。特にマンション価格の高騰が顕著で、都市部では200を超える(つまり2倍になっている)水準です。

では、なぜこれほどまでに値上がりしているのでしょうか? 「バブルだから、いつか弾けて安くなるはず」と期待される方も多いですが、現在の価格上昇は、単なる投機的なブームとは質が異なります。主な要因は「コストプッシュ型のインフレ」です。

世界的なインフレや円安の影響を受け、木材、コンクリート、鉄鋼といった建築資材の価格が高騰し続けています。加えて、建設業界における深刻な人手不足による人件費の上昇や、住宅性能(断熱・省エネなど)向上によるコスト増も、建築費を押し上げる大きな要因です。
つまり、今後もし土地の価格が多少下がったとしても、その上に建てる「建物」のコストが下がる見込みは薄いということです。「価格が下がるのを待つ」という選択は、インフレが続く限り、「さらに高くなった物件を買うことになる」リスクと隣り合わせなのです。

重要な点は、住宅価格は「今だけ一時的に高い」というよりも、長期的な上昇トレンドの中にあるという点です。「いつか安くなるのでは」と待ち続けても、以前の価格水準に戻る可能性は極めて低い。これが、直視すべき現実的な見方と言えるでしょう。

見落とされがちな「家賃上昇」と「掛け捨て」のリスク

「今は高いから、賃貸のまま一旦様子を見よう」 そう思うのは自然な考え方ですが、実はここには大きな落とし穴があります。それは、「家賃もまた、インフレの影響を受ける」という事実です。

総務省の消費者物価指数を見ても、物価全体の動きに遅れて、家賃にも上昇圧力がかかり始めています。不動産オーナーにとっても、修繕費や管理コスト、固定資産税などは上がっており、それを家賃に転嫁せざるを得ない状況がきているからです。

そして、FPとして最も懸念するのは「時間のロス」と「コストの掛け捨て」です。
例えば、家賃10万円の賃貸住宅に住んでいるとしましょう。 もし購入を5年間先送りにして賃貸に住み続けた場合、以下の住居費がかかります。

  10万円 × 12ヶ月 × 5年 = 600万円

更新料を含めればさらに額は膨らみます。この600万円は、自分の資産にはならず、完全に消費されて消えていくお金です。

また、35歳の方が購入を5年遅らせて40歳で購入した場合、35年ローンの完済は75歳になります。現役期間中に返済できる期間が短くなり、老後資金を圧迫するリスクが高まります。

 ・購入するのであれば、物価と金利が少しでもコントロールできる内に動く
 ・家賃という掛け捨てコストを、資産形成(住宅ローン返済)に換える

インフレ時代においては、現金のまま持っておくよりも、実物資産(住宅)に変え、早めに残債を減らしていくことが、結果として資産を守ることに繋がります。

「ライフプラン」なき購入はギャンブル

ここまで「早く動くことの合理性」をお伝えしましたが、焦って身の丈に合わない物件を買うことだけは避けなければなりません。 「今が買い時」かどうかを決める最終的な判断材料は、市場の動向よりも、「あなた自身のライフプラン」の中にあります。

私は相談を受ける際、必ず「ライフプランシミュレーション」を作成します。これは、現在の収支だけでなく、将来の教育費のピーク、老後の年金受取額などを可視化し、今後20年〜30年の家計が破綻しないかを確認する作業です。

 ・子どもが大学に行く時期に、ローンの支払いは厳しくならないか?
 ・修繕積立金が値上がりしても、家計は耐えられるか?
 ・ボーナス返済に依存しすぎていないか?
 ・共働きができなくなった場合のリスク許容度は?
 ・住宅ローン返済後も、教育費や老後資金を確保できるか?

これらを数字で確認し、課題があれば「物件価格を500万円下げる」「ペアローンで控除を最大化する」「住宅費以外の固定費を見直す」といった対策を講じます。重要なのは、「借りられる金額」ではなく、「安心して返し続けられる金額」を基準にすることです。

シミュレーションの結果、収支が安定しており、かつ以下のような明確な購入目的があるならば、迷う必要はありません。

 ・子供の学区を固定させてあげたい
 ・現在の賃貸が手狭で、生活の質(QOL)が下がっている
 ・在宅ワークのための環境を整えたい

「家族の幸せ」という目的があり、それを支える「資金計画」に問題がないのであれば、市況がどうあれ、あなたにとっては今が「買い時」なのです。

「金利ある世界」の住宅ローン戦略:変動から固定へのシフト

購入を決断した次に悩むのが、住宅ローンの選択「変動金利か、固定金利か」という問題です。 これまでの日本は、長期間にわたり超低金利時代が続いていたため、「住宅ローンは変動金利」が圧倒的に優勢でした。

しかし、その常識は通用しなくなりつつあります。 2024年に日本銀行はマイナス金利政策を解除し、日本もいよいよ「金利のある世界」へと足を踏み入れました。変動金利は、半年ごとに金利が見直されるため、将来的に返済額が増えるリスクを常に抱えることになります。

「これから急激に金利が上がるのでは?」と心配される方も多いですが、現時点では緩やかな上昇が想定されています。ただし、ここで意識しておきたいのは、「これ以上、金利が下がる可能性は低い」という点です。

住宅金融支援機構のフラット35の金利推移を見ると、コロナ禍前後の非常に低い水準から、直近ではじわじわと上昇しています。「今は金利が低いから様子見」ではなく、「今の金利をどう活かすか」という視点が重要になってきています。

「金利が上がったら、固定金利に借り換えればいい」という意見もありますが、これは現実的ではありません。変動金利が上がる局面では、既に固定金利はもっと高い水準に上がっているからです。
そこで今、FPとして推奨する選択肢が増えているのが、「フラット35」などの全期間固定金利です。

なぜ今、固定金利なのか?

1.インフレヘッジとしての役割

インフレ(物価上昇)が起きると、お金の価値は下がります。しかし、固定金利で借金をしていれば、返済額は変わりません。物価や給料が上がっていく中で返済額が変わらないということは、実質的な負担感は年々軽くなっていくことを意味します。

2.「安心」を買うコスト

変動金利との金利差は、いわば「将来の金利上昇リスクをゼロにするための保険料」です。特に、これから教育費がかかる子育て世帯にとって、「今後35年間、住居費が変わらない」という確定要素は、家計管理において最強の武器になります。

3.子育て支援などの優遇措置

最近のフラット35は、「子育てプラス」などの制度拡充により、当初の金利が大幅に引き下げられるケースがあります。これらを活用すれば、変動金利との差を縮めつつ、長期的な安心を手に入れることが可能です。

まとめ:正解は市況ではなく、あなたの「ライフプラン」にある

今は、住宅購入にとって「楽な時代」ではありません。 しかし同時に、「待てば条件が良くなる時代」でもないというのが現実です。
大切なのは、以下の3点が揃っているかどうかです。

 ・明確な購入目的があること
 ・ライフプラン上、無理のない返済ができること
 ・将来の安心を優先したローン戦略を立てられること

これらが揃っている方にとって、今は「検討を本格化させる価値のある時期」と言えるでしょう。
住宅は、人生で最も大きな買い物の一つです。 「家賃を払い続けるか、住宅ローンに切り替えるか」、どちらも住居コストであることに変わりはありません。そのお金が、将来の安心や暮らしの満足度につながるかどうか。ぜひ一度、ライフプランの視点から考えてみてください。

もし、「自分たちの適正予算がわからない」「固定金利と変動金利、どちらが自分の家計に合っているか知りたい」と思われたら、ぜひ一度、お近くのファイナンシャルプランナーにご相談ください。
住宅購入はゴールではなく、新しい生活のスタートです。 このコラムが、あなたの賢い決断の一助となることを願っています。
 
 
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※掲載内容は2026年1月時点のものです。

執筆者
株式会社400F 松井 大輔(CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅ローンアドバイザー/証券外務員一種)
2009年株式会社東芝入社。携帯・スマートフォンの開発設計に携わり、その後富士通を経てジブラルタ生命保険で保険営業に従事。セミナーや金融コラム執筆などで活動し、現在は株式会社400Fでファイナンシャルプランナーとして活躍。

オカネコ
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