ローン申し込みから確定申告までの手続きを知ろう

【パート1】 ~ローン申し込み後から引渡しまでの注意点~
住宅ローンの審査が終わってほっとしたのもつかの間、入居までには税金のことなど、様々な準備や手続きがあります。

ここでは住宅ローンの本審査申し込みから引き渡しまでに決めることや注意点についてお伝えします。

(1)本審査の申込から資金決済までの流れ
住宅ローンの本審査が終わって物件の引き渡し日(取引の日)が決定すれば、ローン契約(金銭消費貸借契約書)を金融機関と交わします。引き渡し日には住宅ローンの資金が、原則としてローン契約者の口座に振り込まれ、売主などへの資金の支払い(決済)が確認出来たら、カギを受け取ります。同日に司法書士が、所有権の移転登記や保存登記、抵当権の設定登記の手続きを行います。

登記が完了すると「登記識別情報」が発行され新居に郵送されます。登記識別情報は、従来の権利証に代わるもので対象の不動産の所有者であることを証明する書類です。大切に保管しましょう。

(2)出資に応じた名義の決定
夫婦ともに現金を出したり、夫婦ともに借入をするなど、資金を出した人が複数いる場合、土地や建物の名義は、頭金を出した額と住宅ローンの借入額を元に案分した割合とするのが原則です。資金を出していないのに名義を入れると、夫婦間でも贈与とみなされ贈与税の課税対象となります。

たとえば、5,000万円の物件を夫が全額単独ローンで借りて購入すれば、すべて夫名義です。頭金1,000万円を夫が出し、夫婦ペアローンで2,000万円ずつのローンを組んでいたら、夫の持ち分は頭金と借入額を足した割合で5分の3、妻の持ち分は5分の2となります。また住宅資金贈与の非課税制度(※)を使って、夫の親から1,000万円の贈与を受けて頭金とした場合、1,000万円分は夫名義となりますが、妻の親が出してくれれば妻名義となります。

(※)詳細については以下リンク内【(3)住宅資金贈与を受けた場合の非課税制度】をご参照ください
参照URL:https://www.zaijukin.co.jp/column003/

(3)連帯債務の名義と税金の関係
名義の入れ方が難しいのは1つのローンを夫婦で借りる連帯債務の場合です。どちらがいくらずつ借りるという明確な区別がありませんが、下のような例の場合では贈与税が発生する場合があります。

【例】
●土地建物の購入代金5,000万円を頭金なしで購入
●所有権割合:2分の1ずつ(5対5)
●所得金額:夫 600万円、妻400万円
●借入金の負担(債務負担)割合:6対4(所得金額の割合)

【解説】
借入金の負担(債務負担)を夫婦で6対4(所得と同じ)の割合にする約束をした場合、
借入金の負担は夫3,000万円(60%)、妻2,000万円(40%)となり、夫は自身の所有権持分(2500万円)以上の負担をすることになります。この場合、妻が負担すべき債務分500万円(3,000万円-2,500万円)は妻への贈与とみなされ、贈与税の対象となります。

また、住宅ローン減税については、夫が2分の1の持ち分を取得するための負担は2,500万円となるため、実際には3,000万円に対する返済を行っても、減税の対象となるのは2,500万円が上限です。妻についても実際の負担割合である2,000万円が減税の対象となります。

国税庁のホームページには、「連帯債務の負担割合は、所得金額等に応じて合理的に定める必要があり、夫が妻に代わって負担する借入金は、夫から妻に対する贈与となります」という記述があります。

上記の例の場合、夫婦で決めた債務割合に応じて所有権割合を決め、債務割合通りに夫婦が返済額を負担すれば、贈与税は掛からないということです。ローン減税についても、負担割合通りに受けることができます。

このように、連帯債務の場合は、実際の所得の割合等に応じて返済割合や名義を決めないと、思わぬところで贈与税の対象となったり、住宅ローン減税を効果的に利用できなくなってしまいます。心配であれば、連帯債務で借りると決めたら、税金について税理士や税務署に確認しておくと安心でしょう。

※掲載内容は2023年10月時点のものです。

執筆者
住まいのお金相談室代表 ファイナンシャル・プランナー
有田 美津子
(CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士)