住宅購入時の支援策【パート1】 ~3つの大きな支援策~

今回は、子育て世帯・若者夫婦世帯がZEH(ゼッチ)住宅を取得すると100万円の補助が受けられる「こどもエコすまい支援事業」、「住宅ローン減税」「住宅資金贈与非課税制度」の3つの支援策についてお伝えします。

3つの支援策は併用可能ですが、注意点もあります。「知らなかったから使えなかった!」ということがないように、利用するためのポイントを押さえましょう。

(1)ZEHレベルの住宅に100万円!「こどもエコ住まい支援事業」
「こどもエコすまい支援事業」とは、子育て世帯・若者夫婦世帯がZEHレベルの住宅を新築・購入する際に1住戸につき100万円の補助金が受けられる制度です。一定の省エネ改修を行う場合も子育て世帯・若者夫婦世帯で最大60万円、その他の世帯で最大45万円の補助金が受けられます。

いずれも「こどもエコ住まい支援事業」に登録した事業者と工事請負契約や売買契約を結び、交付申請等の手続きは事業者が建築主に代わって行います。登録事業者については「こどもエコ住まい支援事業」の専用サイトから確認できます。

ここからは、新築住宅を取得する際の対象となる要件についてご案内します。

①対象者
2023年4月1日以降に着工する住宅の対象世帯

出典:こどもエコすまい支援事業の専用サイトより筆者作成

②対象となる新築住宅
証明書等によりZEHレベルと確認できる住宅が対象です。ZEH住宅とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略語で、家庭で使用するエネルギーと太陽光発電などで創るエネルギーの収支が実質ゼロ以下になる高断熱・高性能の省エネ設備を整えた住宅のことです。

対象となるZEH住宅

出典:こどもエコすまい支援事業の専用サイトより筆者作成

その他の要件は以下の通りです。
・自ら居住する住宅であること
・住戸の床面積が50㎡以上であること
・土砂災害防止法上の「土砂災害特別警戒区域」でないこと
・未完成または完成から1年以内で、人が居住したことがないもの
・交付申請時に「基礎工事が完了していること」など一定の出来高が確認できるもの

③対象期間
交付申請は契約を結んで基礎工事が完了してからしかできません。また、最終期限より前に予算がなくなればその時点で終了となります。なお、予算に対する補助金申請額の割合は「こどもエコすまい支援事業」の専用サイトトップページで確認できます。

契約から交付決定までの流れ

出典:こどもエコすまい支援事業の専用サイトより筆者作成

補助金の対象となるZEH住宅は、省エネだけでなくエネルギーを創り出す「創エネ」も必要となるため、太陽光発電や蓄電池といった省エネ設備を設置するのが一般的です。省エネ設備については別途自治体の補助金の対象となる場合があります。重複して国の補助制度を受けることはできませんが、国費が充当されていない自治体の補助制度は併用可能です。併用できる自治体の補助金制度がないか、建築業者に相談してみましょう。

(2)2023年中入居がお得な住宅ローン減税
住宅ローン減税は、年末の住宅ローン残高の0.7%が払った税金から戻ってくる制度です。所得税で引ききれない分は、次の年の住民税から9.75万円を上限に差し引けます。2022年1月1日から2025年12月31日までに住宅ローンを借りて一定の住宅を購入した人が対象です。

対象者及び対象となる住宅

*令和5年末までに建築確認を受けた新築住宅を取得などする場合、合計所得金額1,000万円以下に限り床面積要件が40㎡以上。
出典:国土交通省HPより筆者作成

減税額(控除額)は住宅性能が高いほど大きく、2023年中に入居すると最大控除額が大きくなります。

新築住宅の住宅ローン減税

※2024年1月1日以降に建築確認を受けた「その他住宅」は対象となりません。
出典:国土交通省HPより筆者作成

減税を受けるには初年度は入居した翌年の3月15日までに確定申告を、その後は会社員であれば年末調整で手続きができます。住宅ローン減税は払った税金から減税額がそのまま戻る「税額控除」です。家族構成や年収、住宅の種類にもよりますが、3,000万円を35年返済で年利1%程度で借りても、13年間では200万円を超える減税額となります。必ず手続きしましょう。また、2024年1月1日以降に建築確認を受けた、一定の省エネ基準を満たさない「その他の住宅」は、2024年以降は住宅ローン減税の対象外となるため注意しましょう。

なお、次項で説明する「住宅取得資金の贈与税の非課税」や「こどもエコすまい支援金」など国や自治体の補助金を受けた場合は、その額を対象となる取得費から差し引いた額が減税の対象となります。たとえば、5,000万円の住宅を取得し、500万円の住宅資金贈与と100万円の補助金を受けて住宅ローンを5,000万円借りた場合、住宅ローン減税の対象となる額は最大4,400万円です。これは、住宅資金贈与も補助金も家を買うための資金として使うことが要件となっているため、贈与額や補助金の額を物件価格から差し引いた額がローン減税の対象となるからです。

(3)住宅資金贈与を受けた場合の非課税制度
直系尊属(父母や祖父母等)から住宅資金の贈与を受けた人が利用できる非課税制度です。2022年1月1日から2023年12月31日までに贈与を受けた人が対象です。非課税で贈与を受けられる上限の額は、省エネ性能が高いなど質の高い住宅で1,000万円まで、それ以外の住宅で500万円までです。

①非課税枠

出典:国土交通省HPより筆者作成

贈与を受けた翌年の3月15日までに贈与資金を住宅の新築、取得、増改築に充てて、贈与を受けた住宅に居住または居住見込みであることが要件です。遅くとも2024年12月31日までに入居が確認できないと、特例は受けられず修正申告で贈与税を払うことになります。

②贈与を受ける人の要件

出典:国土交通省HPより筆者作成

③対象となる住宅

出典:国土交通省HPより筆者作成

※「住宅ローン減税」「住宅資金贈与の非課税制度」の適用有無など詳細については、税務署等へご確認ください。

2023年の支援策は省エネ性能が高いほどメリット大
以上3つの支援制度についてご案内しました。

2023年の支援策は、地球温暖化防止の観点からも省エネ性能など質の高い住宅程メリットが大きくなっています。住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供する全期間固定金利の【フラット35】もZEHレベルや耐久性・可変性、耐震性が高い一定水準の住宅取得で金利の優遇が受けられます。子育て世帯や若者世帯向けに地域の補助金と連携して金利の引き下げが受けられる制度もあります。

補助金や減税、金利引き下げの制度は本人や住まいの要件はもちろん、スケジュール管理も複雑です。住宅購入を考えたら、まずは個別相談会等で自分自身が使える制度について相談してみてはいかがでしょう。

※掲載内容は2023年6月時点のものです。

執筆者
住まいのお金相談室代表 ファイナンシャル・プランナー
有田 美津子
(CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士)