住宅購入時の支援策 【パート2】 ~「ZEH」住宅等への補助制度~

今回は「こどもエコすまい支援事業」以外に使える「ZEH(ゼッチ)補助金事業」、「フラット35金利引き下げ制度」「地方公共団体などその他の補助金事業」についてお伝えします。

快適で一生安心して暮らせる質の良い住宅が欲しいけれど、費用が心配!という方は、ぜひご一読ください。

(1)ZEH補助金事業
まずは、ZEH住宅(一戸建て)を新築購入する人が対象の「ZEH補助事業」についてお伝えします。ZEH(ゼッチ)住宅とは、太陽光発電などで創りだすエネルギーと、消費する一次エネルギーがゼロになる高性能な省エネ住宅のことです。

戸建住宅のZEH補助事業には、①「ZEH支援事業」、②「次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業」、③「次世代HEMS実証事業」の大きく3つがあります。いずれもSII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)に登録しているZEHビルダー/プランナーが、建築、設計または販売している住宅です。ZEHビルダー/プランナーはSIIのサイトで公表されます。

ゼッチビルダー/プランナー(フェーズ2)一覧検索(SII)

それでは、それぞれの内容について見ていきましょう。

①ZEH支援事業
住宅を新築または購入する個人と、新築住宅の販売会社が対象者です。ZEHのレベルにより、「ZEH」と「ZEH+」があり、「ZEH+」は「ZEH」以上に断熱性が高く省エネ効果が高い設備を整えた住宅です。

一戸当たりの補助額は「ZEH」が定額55万円/戸、「ZEH+」が定額100万円/戸です。いずれも蓄電システムなど高性能な省エネ設備を導入することで、プラスアルファの補助金を受けることができます。

図表1

②「次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業」
住宅を新築・購入する個人が対象です。図表2の「補助金交付要件のポイント」にあるように、「ZEH+」の要件を満たしたうえで、蓄電システムや燃料電池など、より高度な設備をいずれか1つ導入した住宅が対象です。

補助額は1戸あたり定額100万円/戸で、蓄電設備などの導入で加算があります。補助額の詳細や省エネ基準については図表2でご確認ください。

図表2

③「次世代HEMS実証事業」
住宅を新築する人が対象です。建売住宅の購入では使えません。HEMS(ヘムス)とはHome Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)の略語で、電気やガス、水道の利用料をモニターで見えるようにし、使っていない家電機器をオフにするなど、消費エネルギー費を削減してくれるシステムです。

「次世代HEMS」はさらにAI(人工知能)やIOT(モノのインターネット)を活用して、消費エネルギーを自動でコントロールします。たとえばAIがスマートフォンアプリを通してエアコンの最適な設定温度を提案、外出先からも変更できる等、さらに節電効果を高めるシステムです。

補助金の額は定額112万円/戸で、蓄電システム等の設置により追加補助があります。詳細は図表3でご確認ください。

図表3

④ZEH補助事業の申請とスケジュール
補助金の申請は個人でもできますが、建築業者や販売業者などに手続きを依頼して申請することも可能です。
申請期間や完了報告の期限は以下の通りです。

図表4 スケジュール

(2)ZEH住宅で【フラット35】の金利引き下げも
全期間固定金利型住宅ローン【フラット35】には、ZEH住宅など高性能な住宅を建築・購入すると金利が一定期間引き下げとなる【フラット35】Sがあります。【フラット35】Sには、【フラット35】S(ZEH)と(金利Aプラン)、(金利Bプラン)があり、それぞれ金利引き下げ期間と引き下げ幅が異なります。

図表5 金利引き下げ内容

また、【フラット35】Sと合わせて使える金利引き下げメニューとして、【フラット35】維持保全型(維持保全・維持管理に配慮した住宅や既存住宅の流通に資する住宅に対して金利引き下げる制度)、【フラット35】地域連携型(地方公共団体が住宅金融支援機構と連携し、補助金とセットで金利引き下げを行う制度)があります。

フラット35の金利引き下げは「ポイント制」
【フラット35】は、先ほど説明した金利引き下げメニューごとにポイントを定め、合計ポイントに応じて金利引き下げ幅・金利引き下げ期間が決まる「ポイント制」となっています。

図表6 金利引き下げメニュー

例えば、省エネ性能が高い【フラット35】S(ZEH)と維持保全型・地域連携型のメニューいずれかを併用できた場合、当初10年間の金利が年0.5%引き下げとなります。もし、3,000万円を35年返済で借り、【フラット35】の金利が1.73%だった場合、当初10年間の金利は1.23%となり、利息は約148万円少なくなります。

【フラット35】の金利引き下げ内容は少し複雑です。住宅金融支援機構のホームページで利用要件等を確認しましょう。また、「【フラット35】金利引き下げ内容確認」のページで金利引き下げ幅がわかります。補助金の内容とあわせて確認しておきましょう。

【フラット35】維持保全型
【フラット35】地域連携型
【フラット35】金利引き下げ内容確認

(3)その他の補助金事業
その他の補助金制度として、「地域型住宅グリーン化事業」や「LCCM住宅整備推進事業」「地方公共団体の補助金事業」などがあります。

「地域型グリーン化事業」は、地域の木材業者や流通業者、中小の工務店や設計事務所などがグループとなって事業に登録し、そのグループを通じて地域の木材を使った省エネルギー性や耐久性が高い木造住宅を取得した人が受けられる補助金です。「こどもエコすまい支援事業」と併用できるタイプで最大140万円の補助が受けられます。

地域型住宅グリーン化事業 採択グループ一覧

LCCM住宅とは、「ライフ・サークル・カーボン・マイナス」の略語で、家を建てるときから取り壊して廃棄するまで、CO2(二酸化炭素)の削減に取り組み、CO2の収支をマイナスにする住宅です。最大で1戸当たり140万円の補助金が受けられます。

図表7 金利引き下げメニュー

最後に各地方公共団体による補助金制度ですが、ZEH住宅のような省エネ住宅や太陽光発電や蓄電池など省エネ設備に加え、耐震化、バリアフリー化、環境対策、防災対策、二世帯住宅などを対象に受けられます。内容は地方公共団体ごとに異なりますので、各々のホームページから内容を確認しておきましょう。

また、国の補助金を併用することは原則できませんが、国の補助金制度と地方公共団体の補助金制度は併用できるものが数多くあります。補助金の申請には期限があり、予算がなくなったら期限より前でも終了となりますので、住宅購入の資金計画と共に情報収集をはじめましょう。

ZEH住宅をはじめ性能の良い住宅は、購入後も大きく光熱費を削減し、一定のメンテナンスを行うことで長く安心して住める住宅です。補助金や金利引き下げ、減税制度などをうまく組み合わせて、冬暖かく夏は涼しい、かつ子供の代まで引き継げる住宅を考えてみてはいかがでしょうか。

以下参考にしたサイト
地域型住宅グリーン化事業
グループ募集要領 P2~3

ネット・ゼロ・エネルギーハウス推進に向けた取り組み
2023年の経済産業省と環境省のZEH補助金について
ゼロエミ

※掲載内容は2023年8月時点のものです。

執筆者
住まいのお金相談室代表 ファイナンシャル・プランナー
有田 美津子
(CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士)